アルクニンゲン・廃線跡篇

第二武庫川橋梁

○○篇といっても別に第2話や続編があるわけではないので悪しからず。


今日は、当初は再び鉄研に顔を出そうかと考えていたのがいろいろあって予定変更。珍しく鉄研の61回生だけで集まろうという流れになって、結局同学年の7人のうち6人が集まって福知山線廃線跡歩きをすることに。
そんなわけでまずは朝9時半に大阪駅に集合。
そこから快速で尼崎まで乗って宝塚行きの快速に乗り換えて川西池田まで行くんですが、これがなんと321系
321系快速宝塚行き@川西池田
東西線学研都市線321系が入線するようになっても4両編成が限界の京田辺以遠に直通する快速運用に入るのは長らく分割併合のできる207系の独擅場になっていたんですが、このたび京田辺〜木津間の駅が7両対応に延長されたので分割併合が無くなり今月のダイヤ改正321系も東西快速の運用に入るようになったんですよね。話には聞いてたけど実際見てみるとやっぱり違和感。
そこからは隣で延々と接続待ちをしていた新三田行きの普通(これも321系)に乗って生瀬まで。というか川西池田から先は宝塚まで全駅停まるんだからわざわざ川西池田で待避する必要は全く無いはずなんですが…宝塚で乗り換えにすると階段の上り下りが鬱陶しいとかそういう理由なんでしょうかね。。
まぁそんなわけで生瀬到着。ここで通過2連発(しかも1本目は回送らしい)だったので何が来るのかとwktkしながら待っていたのに結局来たのは207系のおそらく定期回送だったのでちと残念。
とりあえず生瀬の駅でSuicaICOCAではなく)をピッとタッチして下車、駅前のコープミニで軽く飲み物なんかを調達したあといよいよ出発です。
…どうでもいいけど駅の線路際にこんな標識が。
5秒ルール
結構よく見かけるこの『5秒ルール』の看板。
この意味はもちろんここで食べ物を落としても5秒以内に拾って食べれば大丈夫…というわけではなく、保線作業の時には安全確認のための無線連絡を5秒に一度はすること、みたいな意味だったはず。


さてまずこの廃線跡について軽く解説をしておくと、福知山線廃線跡といっても福知山線自体は今でももちろん存在するわけで、それではこの廃線は何なのかと言われればそれは旧線の跡。
生瀬〜道場の間は山が連なる区間で、かつては武庫川渓谷沿いに単線非電化の線路が伸びていたんですが、その区間を複線の長大トンネルで直線的に貫く新線が建設されてこの旧線はお役御免になったというのはもう25年近くも昔。それがとても風光明媚な場所だったために、生瀬〜武田尾間はいつしか有名な定番ハイキングコースとなったというわけなのです。


さて、とりあえず線路をくぐって反対側に出て、比較的交通量の多い道路をしばらく歩く。
しばらくすると左側に廃線跡らしき場所に入れそうなところがあったのでそこを登って入ってみたんですが、いざ入ってみるとそのすぐ先が廃線跡を潰して道路工事をしているような状況…。
福知山線廃線跡にて(その1)
最近舗装されたと思わしき真新しいアスファルト、柵も何も越えていないのに気がつけば柵の中に迷い込んでおりました。…しかしこの道の先はまだ全く開発される気配が無く、いったい何のためにこんな中途半端な道路を作っているのかは激しく謎。慌てて舗装したのは年度末恒例の予算使い切りか何かでしょうか。。


仕方なく柵の横の隙間を通って元の道に戻る。どうやら昔はここからそのまま廃線跡が繋がっていたのが、この交通量の多い道路が整備されて分断されたっぽい雰囲気。
なにしろ交通量が多いので大変だったんですが、ちょうど車の流れが滞ったタイミングを見計らって反対側に渡ってしばらく歩くと、これまた廃線跡に繋がる真新しい道が整備中。しかも無駄に広くてきれい。
どう考えても道が出来上がっているにも関わらず立入禁止になっているんですが、近くには他に廃線跡に繋がってそうな道も無く、そこに関係者と思わしき軽トラのおっちゃんがいたのでどうしようかと思って訊いてみたらここを通っていいということなのでまたしても立入禁止区域を強行突破。いや強行じゃないか。


というわけで、生瀬の駅を出て歩くこと約30分、ようやく廃線跡の入り口に到達。
福知山線廃線跡にて(その2)


いかにも廃線跡っぽい趣の砂利道ですが、ここから少し歩くとこんな看板が。
福知山線廃線跡の看板
長ったらしい文章が書いてあるけど『ここはハイキングコースのつもりで置いてあるわけじゃないし一応立入禁止ってことにしてあるから、入るのは勝手だけど事故を起こしても知らないよbyJR西日本』というのがこの看板の主旨。しかし今や関西圏を代表する有名なハイキングコースになっているこの廃線跡に来て、入るなと言われて引き返す人など誰一人もいないのはご存知の通り。もちろん気にせず進みます。


福知山線廃線跡にて(その3)
いかにも渓谷を走るローカル線にありがちな風景ですが、唯一違うのは線路が無いこと。雰囲気的には保津峡を走る嵯峨野トロッコに近いかも。


福知山線廃線跡にて(その4)
そしてとうとう現れたトンネル。北山第一隧道という名前だそうで、入ってみると確かに明かりの類は何も無いのでひたすら暗い。強力なLED式の多機能懐中電灯を持って行ったのでその点では全く安心だけど、せっかくならしばらく真っ暗な中を歩いてみようということで何もつけずに歩いていたらホントに真っ暗(当たり前)でなんか肝試しみたいな気分。


福知山線廃線跡にて(その5)
しばらく進んだところで出口の明かりが見えてきたので、振り返って来た道を撮ってみるとこんな感じ。ここに誰かの顔でも写ってたら完璧に心霊写真なんだけどさすがにそんなこともなく。


そしてトンネルを抜けるとたった数分の間にすっかり晴れていた。いよいよスタンドバイミー的な気分全開で…といきたいところだったのにここでひとつ残念なものを目にすることになる。


福知山線廃線跡にて(その6)


何 こ の フ ェ ン ス ('A`)


ハイキングコースではないとか整備がなされてないだとか通行等には大変危険だとかで入るなとかさんざんさっきの看板に書いてあったくせにいざ入ってみたらこれですか…。
『か、勘違いしないでよ!?別にあんたたちハイキング客のために整備してあげてるんじゃないんだから////』というツンデレJRのお節介か何かは知らないけどこれでは廃線跡の魅力半減。普通なら真面目に道なりに歩いてる限りでは危険なところなんて何一つないんだから何があっても自己責任でどうぞってことでいいと思うんだけどなぁ…。とりあえずこんなところに金かけてる暇があったら廣島の末期色115系に帯の一本でも貼ってやれよと小一時間。


そしてしばらく歩くとちょうど川辺が近く、ちょうど梯子がついていて降りられそうなところを発見したので邪魔なフェンスを軽く乗り越えて河原に下りてみる。もちろん自己責任。
しかしなんだか去年の球磨川を思い出すなぁ…なんて考えていたら、その後結局みんなで河原の石を投げたり水切りをしたりしててやっぱりやることは相変わらずでしたw
そんなことをしている間にもうすっかり昼になってしまったのでこの河原でお昼に。


六甲山縦走弁当
芦屋駅で買ってきた六甲山縦走弁当。まさにこういう時のためにあるような駅弁です。純和風だけど牛肉やらタコやら淡路屋らしい要素が至る所に。もちろん味のほうはお墨付きですが、これで600円というお値段も素晴らしいです。
その後なぜか干ししいたけ氏(仮称)がコープミニで仕入れてきたカリフォルニア産レーズンをみんなでつまんだり(まぁたしかに糖分豊富だけどなんともいえないミスマッチ感が…w)しつつのんびりと過ごして気がついたらここに来てから1時間ほど経ってしまったので、ぼちぼち出発。


武庫川渓谷の風景(その1)
風光明媚な実に良い風景。


さて、梯子を伝って元の道に戻り再び進む。実はまだ全行程の半分にも届いていないんですが。
福知山線廃線跡にて(その7)
線路こそ外されているものの25年近い歳月のわりには鉄道路線として使われていた時代の遺構が数多く残っていて、制限速度標識もこんな感じでところどころそのまま残っています。おっと人間の歩く速さは秒速80m(内輪ネタ)なので減速しなければ…!?


福知山線廃線跡にて(その8)
こんな小さいトンネルのようなものもあるけどこれはさすがに違うかなぁ…。もしトンネルだったら樽沢トンネルもビックリの短さなんだけど。


武庫川渓谷の風景(その2)
そして北山第二隧道を抜けていけば今度は見返りの道とよばれる、この廃線跡の中でも渓谷風景の最も美しい場所に到着。川からの標高差は結構なもので、眼下はるか下にはごつごつした岩場と音を立てて流れ落ちる水。


武庫川渓谷の風景(その3)
これでもう少し水がきれいだったら何も言うことはないんですが、よくよく考えたらこれだけの秘境でもまだ一大ベッドタウンである三田よりももっと手前なわけでして…そう思うとなんか凄いなぁ。。


しばらく進んだところにちょっとした掘割を進むところがあるんですが、ふと山側を見るとこんなレンガ造りの壁が。
福知山線廃線跡にて(その9)
山側の大きな岩とその周囲を囲むように敷き詰められたレンガの壁はそれだけでもなかなか良い仕事してるんですが、それが流れる湧き水によって程よく苔むしていてなんとも味わい深い。


その後溝滝尾隧道に入り、真っ暗な中に緩やかなカーブを描いて進むトンネルを進めばその向こうには色褪せた赤色の鉄骨が見えてきました。


第二武庫川橋梁(その1)
これがこの廃線跡の後半のハイライトである第二武庫川橋梁。武田尾〜道場間は廃線に伴い鉄橋も落とされて今ではトンネル以外の遺構はほとんど残っていないらしいんですが、なぜこっちの区間は線路を剥がす以外はほとんど手がつけられないままだったのかは全くの謎。


第二武庫川橋梁(その2)
長い間補修などの手を全く加えられなくても、大嵐にも洪水にも耐えてずっと大自然のど真ん中に鎮座し続けている大きな人工物。塗装が浮いて剥げところどころ錆の浮いた鉄骨、そしてそのディテールが醸し出す機能美はまさに廃墟の美学。


第二武庫川橋梁(その3)
廃線跡というのは実に被写体に尽きないものです。
こうして今こんなアングルで写真が撮れるのはまさしくここが廃線跡であるからに他ならないのですが、出来ることならぜひ一度この路線を長大客車列車に乗って旅してみたかったものです。もしもこの世にタイムマシンというものが存在したならば、きっと自分は鬼籍入りしたかつての鉄道路線の数々に足を運ぶことになることでしょう。


その鉄橋を渡るとまたすぐに長尾山第一隧道というトンネルに入ります。ここはかつての洪水の時にずいぶん路盤が流失してしまったようで、側溝と比べて路盤がずいぶんと低くなっていました。
そしてそのトンネルの終端部に、何かが置かれているのを見つける。


花束…?
これは…花束…?
飛ばされないように石でしっかりと固定されていて、人工物たるプラスチックの包装は当然そのままであったけれども中に入っていたと思われる花は完全にしおれて朽ち果てていて、どうやら相当前にここに置かれたもののようです。
このトンネルを出てすぐの壁の裏側の場所では路線敷設の際にダイナマイトが暴発して作業員が亡くなったという事故があったようですがそれはもう100年以上も昔の話だから多分関係は無いはず。
最近この場所で、この廃線跡で何があったというのだろうか…。


そしてトンネルを出たところには例の責任逃れ看板が。ということは廃線跡はもう終わり…?と思いきや、ここから先の武田尾駅手前までの区間は公園として整備されているようで、途中には笹部新太郎がかつて演習林として使っていた場所を整備した『桜の園』の入り口もありました。


福知山線廃線跡にて(その10)
というわけでここからは廃線跡らしいディープな雰囲気は薄れて、名目上にも実質的にもハイキングスポットに。いやむしろピクニックといったほうが正しいかもしれない。
駅やトイレまでの距離を示す標識があったり、トンネルも短くてライトが不要だったりというわけでもうそろそろ良い場所は終わってしまった感じですが、しばらく歩くと武田尾駅方面が見えてきました。
福知山線廃線跡にて(その11)


そして終端部のちょっとした広場みたいなところでトイレに行ったりまたレーズンを食べたりしつつ暫し休憩した後で再び歩き出す。缶ビールや缶ジュース、アイス、弁当、おでんと同列扱いで『生しいたけ』と書かれた看板を見て一同が思わず爆笑したり(どうも最近しいたけの単語に異常に反応してしまうけどまぁ本人が身近にいるから仕方ないね)阪急田園バスという謎のバスのバス停があったり、そしてその歩いている道がまさに旧武田尾駅の跡だったりしつつも、ようやく武田尾駅に到着。どうでもいいけどひらがなで『〜だお』と書くとその後ろにAAを書きたくなるのは気のせいか。
武田尾駅
たけだお(^ω^)
たけだおだお(^ω^)




名塩隧道と207系
名塩隧道から鉄橋の上にひょっこり顔を出す207系。山間のローカルな雰囲気にステンレスの通勤形車両という組み合わせがなんともミスマッチ。


せっかくなのでもう少しだけ武田尾温泉のほうに向かって歩いて行くと、途中で90度曲がって抜ける出口が作られたトンネル(これも廃線跡)が。さらにその先にある橋のところまで行ったものの、特に温泉には用事は無かったのでぼちぼち引き返すことに。


武田尾温泉方面を望む
ちなみにこれがその橋。数年前の台風でもともとあった橋が流されたために架け直されたんだとか。そして奥のほうにあるのが武田尾温泉


で、駅に戻ってSuicaでピッと中に入る。立派なディスプレイが運行情報を表示してたんですがこの駅には正直あんまり必要ないような…。


321系@武田尾
名塩隧道からやって来た321系を上りホームから撮影。
この駅はアクセスが便利なのに立地的にはかなりの秘境駅だという他にも、駅自体も半分弱が鉄橋の上、残りの半分強がトンネルの中にあるという実にユニークで素敵な駅なのです。


武田尾駅と321系
なんというか…筒石駅が超近代化したらこんな感じになるんでしょうか。まぁならないだろうけど。。


武田尾駅にて
そして今度は鉄橋の上から武庫川渓谷と駅名標を絡めて。


そんな感じでしばらく武田尾駅そのものを楽しんだ後、やってきた207系に乗り込んで宝塚で下車。ここでこの後九州に行く(ちなみに今朝はMLながらでこっちに来たとのこと)らしい干ししいたけ氏(仮称)とも別れ、そのまま改札へ行ってみるとこの駅もずいぶんと田舎臭い駅だったのが橋上化されてやたら綺麗な新駅舎に生まれ変わっていたのでビックリ。
宝塚駅新駅舎にて
ちなみに生瀬駅のコープミニを出発してからここまで4時間半でした。かなりゆっくりしてたんだなぁ…。


阪急に乗り換えた頃いは自分も含めて皆さんそろそろ疲れてきて口数も減ってきたんですが、今津北線でうとうとしつつも西北に着いたのでそこからはそのまま阪急で帰宅。
そんなわけで、今日はかなり久しぶりにしっかりとハイキングなんてものをしたもんだから何気にかなり疲れたけど、その分浪人中のなまった身体を動かすいい運動にもなったし、なにより久々に61回生だけで集まれたというのが楽しかった。素晴らしい一日でした。