走り去るものを追って。

0系@新大阪

今日から高校最後(正しくは受験前最後)の旅行。
朝始発から2本目のバスに乗ってJR芦屋まで行き、そこで18きっぷに印を入れてもらう。
予定よりも早く駅に着いたので、予定よりも早い快速に乗って新大阪へ向かう。
快速草津行き。もうずいぶんと数少なくなった221系C編成も組み込んだ10両編成。ラッシュ時間にそろそろ入る頃だったんですが、車内はわりと空いていたので大荷物を持っていても大丈夫。
朝だけ限定の外側線を爆走して新大阪の特急ホームに滑り込み、そこからは飲み物だけ買っていざ新幹線改札へ。新幹線という移動手段は自分は旅行の時にはあまり使わないんですが、今回は特別。株主優待がここで役に立つわけです。
ホームに上がって列車を待つ。さすが日本一の大動脈というだけあって、同じような色のスリッパみたいな形をした電車ばかりがひっきりなしに到着しては走り去って行きます。
そんな中、しばらく待っていると西の方からライトが見えて、それが次第に近づいてきてついに今日の第一の主役が姿を現しました。




0系@新大阪(その1)
『夢の超特急ふたたび』


最新型の車両たちとは違って丸みを帯びた可愛らしい顔はこれが45年前の設計だとはにわかに信じられないようなエバーグリーンなデザイン。
そしてそのどっしりとした重厚な存在感は、この車両が焼け野原から急成長を遂げて世界でも五本の指に入るような先進国のとなった日本の戦後史を支えてきた立役者であるに相応しい風格を漂わせています。これは…カッコいい。
0系@新大阪(その2)
新大阪駅にはたくさんのファンが詰めかけていて、もちろん鉄ちゃんのオーラを漂わせた人もいたものの、多くは昭和時代をこの車両とともに駆け抜けてきたであろう大人たちの家族連れ。子どもを新幹線の前に並ばせて写真を撮っている姿は、まるでこの車両が東海道の花形だった時代に戻ったかのようでした。


そして車内へ。


小学生時代にはよく新幹線にお世話になっていたんですが、いつもこだまの自由席なんてのは1両に10人乗っていればまだ良い方で、ひどい時には自分を含めて5人もいなかったようなことも。それと比べるとものすごい大盛況ぶりです。混雑とまではいかないものの、座席の列は半分ぐらい埋まっています。こんなに人が乗ってるこだまは初めて見た…。。
車内を見回して懐かしんでいたら、いよいよ新大阪を発車。昔とはすっかり様変わりしてしまった宮原の車両たちを見下ろしながら進み出し、そして鳴り出したのは昔懐かしい案内メロディー。この曲が昔から好きで今でもメールの着信音とかはこれを使っているんですが、再びこれを新幹線で聞けて懐かしさで涙出そうです。


そしてこのこだま号は途中岡山まではひたすら待避祭り。待避線の存在しない新神戸はともかく、西明石で止まり、姫路で止まり、相生で止まり。そのたびに先頭車は撮影会状態に。
0系@西明石鉄道ファンでない人たちの心もこれほど引きつけるのは、この車両がいかに人々の夢を運んできたかのしるしでもあります。
相生では横からN700系がまさしく弾丸のようなスピードでぶち抜いて行きます。さすがbullet train。
N700系@相生
岡山で客が少し入れ替わり、若干ローカル色の増した山陽新幹線を0系は突き進みます。
結構長い時間乗ったはずなのに、気がつけばもう福山。ここで0系に別れを告げます。
次に会うのはテレビでしょうか、新聞でしょうか。自分も今までこの車両にはずいぶんとお世話になってきた身で、それがついに引退と思うと寂しいですが、よくこの21世紀も8年目まで頑張って走ってくれたもんです。
0系よ、ありがとう。そして、さようなら。


700系レールスター@福山
さて、500系と並ぶ西日本の看板新幹線がこの700系レールスター。小5の時には多分一番これにお世話になっている気がするんですが、ここからは久々にレールスターの指定席で一気に徳山まで向かいます。
このレールスターの指定席は2+2になっているのでかなり快適。空間としても落ちついた色使いで実に良質です。どこかの暖色系の照明に水色の水玉模様なんてとんでもないセンスとはワケが違います。しかし今回乗ったサイレンス・カーといえば、昔小学校時代に深夜のレールスターで岡山に戻った時に当時まだ設置されていたチケットホルダーに下車時に思いっきり切符を忘れてきたという思い出が。懐かしいなぁ。
で、速度も0系の220km/hから一気に65km/hもアップして285km/h。500系N700系と同等まではいかないもののさすがに速い。途中さきほどの0系と数秒間だけ束の間の再会を果たし、横から華麗に抜かして行って広島停車、そしてそこを出てまたひたすらトンネルだらけの道のりを走ったかと思うともう徳山に到着。ここからは在来線です。


115系瀬戸内色&115系ミルクオレ色@徳山
そしてもちろん、この広島支社というのは国鉄の聖地。徳山駅もまだまだ国鉄の香りが色濃く残っているんですが、よく考えるとここまで本線級の路線でまだこんな雰囲気がそのまま残っているのは日本中探してもこのあたりだけなのかもしれません。ある意味貴重な場所です。しかしなぜか接続する列車が入線して来る時に東日本で発車メロディーに使われている聞き慣れた音(『せせらぎ』か何かだったっけ)が流れ出したのには吹いたw
で、今回乗車するのは写真右側の115系3000番台。岡山の115系がまだカボチャの非冷房ばかりだった頃はこの車に乗れると嬉しいものでした。当時はまだ左の広島色で、象牙色の電車と呼んでた記憶が。
そんな115系3000番台に乗車し、転クロに腰掛けて目指すは下関。18きっぷ期間中でもここまで来るとほとんど混まないわけで、まったりとローカルな旅を満喫できます。
そして山口県といえばこれ、というほど個人的に印象の深い夏みかん色のガードレールなどを発見しつつ進む。途中本由良駅に停車中に、この先の区間で沿線火災が発生したとかいうことで抑止。まぁ最悪でもプランには余裕だらけだから問題ないとは思っていたんですが何のことはない、10分ほど停まった後運転再開。しかしそのあと車窓を見渡してもどこにも焼けた建物が見当たらなかった気もしなくもない。
それにしても、山口県内の山陽本線って所々原野みたいなところを走ってて車窓的にもなかなか面白いです。宗谷本線さえ彷彿とさせる『何も無さ』がなんとも。
途中新下関にはこんなのも。
0系訓練車@新下関
訓練用に使われている0系。たまーに構内でちょこちょこと動いているようです。今の0系亡き後はおそらくこれが日本で唯一の動く0系になると思われますが…しかしこれもうちょっと綺麗にしてあげて欲しいなぁ。
そして幡生では先日廃回で送られてきたと思わしき客車なども発見。
そうこうしている間にいよいよ終点・下関に到着。これが本州最後の駅。多くの人は慌てて接続を取っている九州方面行きの列車に乗り込んで行きましたが、自分はここで一旦途中下車なのでまったりと駅を見て回る。
415系@下関
つい少し前までは常磐線でも見られた415系鋼製車。向こうではその後鉄屑と化してしまいましたが、JR九州では交直流対応の車両はこれしかないのでまだまだ元気に活躍中。




そして下関駅といえば個人的には外せないのがこれ。
ふく天うどん
ふく天うどん。透き通った薄口ながらもしっかりと味のついたダシにのどごしの良い細めのうどん。そして具はなんといってもなかなか分厚くて大きなふく(フグ)の天ぷら。これが美味しいんですよ。淡白な白身魚としてのフグの美味しさと衣、そしてダシの組み合わせは駅そばとしては一級品。ぷかぷか浮いてるフグ形のかまぼこもなんとも可愛らしい。初めて食べたんですが、これは自分の食べてきた駅そばの中でも間違いなくトップ10には入る逸品。これで450円は正直かなりお得。下関に行く機会があればぜひ一度ご賞味あれ。


キハ47系広島色@下関
山陰本線方面へ向かう列車は気動車。しかしやっぱりJR西日本というわけで、本州最西端に来てもやっぱり『速そうな普通幕』。


105系新広島色@下関
そしてこちらは新広島色の105系。2両1編成にむりやり1両くっつけた変な組成。気動車ならよくあるんですが電車でこういうのって結構珍しいです。しかしこれって新山口行きってことは山陽本線を爆走する運用があるってことなんでしょうね。


そして下関の改札を出て、駅のバスターミナルから路線バスに乗り込む。ここから御裳川までバスに乗るわけですが、旅先で列車に乗るのは慣れたもんですがバスに乗るってのはなかなか新鮮な気分で、またちょっぴり不安な気分になる一瞬でもあります。それにしても本数多いなぁ。
ふくで有名な唐戸市場の前を通り、関門橋の下を抜けて目的地に到着。目の前には関門橋、その先には九州。空は真っ青、壇ノ浦の史跡が夏の海に映えます。せっかくなのでとりあえずみもすそ川公園を少し見学してから行くことに。
長州砲@みもすそがわ公園
これは長州砲とかいう大砲だとか。
源平銅像@みもすそがわ公園
公園の中には、源義経平知盛銅像が。日本人の常識、かの壇ノ浦の合戦の場所がちょうどこのあたり。確かに潮の流れも速く船の行き来も激しい狭い海峡ですね。


せっかく夏っぽい雲も出てるし空も青くて気持ちがいいので、これぞ夏って感じの写真を一枚。
関門海峡の夏




さて、公園の前には国道を挟んですぐのところに関門トンネルの人道の入り口があるわけで。つまりこれから徒歩で九州へ。徒歩なら無料、自転車やバイク(ただし押して歩く条件付き)なら20円で通行可能。
大きなエレベーターに乗り込んで地中深くへ。国道2号線の関門トンネルの真下にあるという関門人道は長さが700m以上あるトンネル。
関門人道
薄暗い地下道がずっとまっすぐ続いていて、これぞまさしくかの懐かしいポケモンヤマブキシティの下を通る地下通路そのものといった趣。まぁ実際は自転車には乗れないし変な道具も落ちてませんでしたけどね。
そして緩やかな下り勾配を降りていき、トンネルの半分ぐらいでちょうど最下点付近に辿り着いた頃に出てきたのがこれ。
山口・福岡県境
ここがあの山口県と福岡県の県境。ここを歩いて渡ってしまうわけです。この上は海。なんとも不思議な感覚ですね。
そしてもう半分歩いたらそこは九州。
関門橋
さっきこちらを見ていた地点がちょうど関門橋の向かい側。結構来たもんです。
そしてここからも門司港へ行くバスの路線自体はあるんですが、困ったことに1時間近くも間隔が開いていたりしたので仕方なく歩くことに。歩くの自体はいいんですが、やたら日射しが暑いし何より着替えやら何やらの全部詰まった大荷物を持って歩くのがしんどいです。


さらに海沿いに歩いているとこんなものを発見。
田野浦臨港鉄道跡
門司港駅の隣から出ていた田野浦臨港鉄道の跡。今は実質廃線になってしまっていますが、来年あたりを目処にここに観光客向けのトロッコ列車を走らそうというプロジェクトが進行中のようで。なかなかいい場所を通っているので良さそうですね。
そこからさらに炎天下歩き、ようやく門司港レトロ地区へ。
跳ね橋と遊覧船
そこで運良く出迎えてくれたのが跳ね橋と遊覧船。この跳ね橋は歩行者専用のものとしては日本唯一なんだとか。まぁ自動車も通れるやつなら西宮浜のところにもあった気もするし。
あちこちいい雰囲気の建物が並んでいたんですが、とりあえず大きい荷物が邪魔なのでまずは門司港駅へ。
門司港駅
風格のある大正の木造建築。駅舎としては日本で最初の重要文化財なんだとか。
今まで門司港という場所には2回ほど来たことがあって、1回目は中1の鉄研旅行でムーンライト九州を門司で降りてから、2回目は中2の鉄研旅行で松山からのフェリーで小倉に着いてからここに来た記憶が。どちらも早朝だったので、ここに昼間じっくりと訪れるのは初めてだったりするわけですが、いずれにせよ個人的には結構思い出深い場所のひとつだったりします。
というわけで、ここのコインロッカーに大きな荷物を預けて身軽になってから門司港レトロ地区へ飛び出すことに。
まずは跳ね橋を渡った後で門司の税関の展示とかを見たりしつつ待ち歩き。イメージとしては函館や小樽をスーパーコンパクトサイズにした感じ。というわけで函館とかに比べればそりゃ全然負けるのは事実ですが、こっちも関門橋が見えたり趣のある駅があったり、またショッピング施設が充実してるので日帰りでぶらりと遊びに出かけるにはちょうどいい雰囲気の場所かもしれません。
門司港レトロにて
ここで少しおみやげとかの買い物をした後、ちょうどいい時間になってきたので今度はグルメタイム。
今回のお目当ては門司港名物の『焼きカレー』。前に行った時は朝だったのでまだどのお店も開いていなかったわけですが、以前からセアリス氏(仮称)がお薦めだと言っていたので一度食べてみたいなぁと思っていたわけですが今回ようやくありつけることに。
いろいろ調べてみたところ、門司港駅を出てすぐ左の通りを挟んだ向かい側にある『CAFE` DINNING BEAR FRUITS』というオシャレなダイニングカフェが焼きカレーの第1回コンテストでグランプリを取ったお店だということだったのでそこに行ってみることに。
お店の中は比較的空いていて、窓からは関門海峡の海も見渡せていい雰囲気。ここで『スーパー焼カレー』のサラダセットをオーダー。
まずサラダが出てきて、それを食べている間に焼き上がったカレーがついに登場。
焼きカレー
焼きカレーというのはまぁ分かりやすく言うとカレーのグラタンみたいなものなんですが、ご飯の上に数種類の野菜や果物、スパイスで2日間かけて作ったというカレールー。そしてその上には玉子とチーズを乗せてじっくりと焼き上げた焼きカレーは熱々の絶品。
スパイシーで深みのあるカレーと、それをまろやかに包み込むチーズと玉子。ぶっちゃけ自分はカレーという食べ物がそれほど好きというわけではなかったんですが、これほど『美味しい!』と思ったカレーはホントに久しぶりです。いやもしかすると初めてかも。テーブルの上の特製スパイスをかけてもまたひと味違ったスパイシーな味を楽しめました。これは確かにお薦め。大盛りもあったんですが普通サイズで十分満足でした。いやー美味しかった。


で、この後コインロッカーから荷物を回収してから門司港駅へ。しかしこの駅、昔ながらのトイレや洗面所が残ってたり、至る所に古き良きこだわりの建物といった風合いが漂っていてなんとも素敵な駅です。


そしてそのレトロな駅に乗り入れてくるのはレトロな列車ではなく、近未来的な独特のミトーカデザインのJR九州らしい新型車両。
817系@門司港
車内のしーとが木と本革で出来ているというなんとも凄まじい普通車、817系。実際に普段使っている人的にどうなのかは知りませんが、少なくともこういう非日常感を味わうにはもってこいの車両ばかり。


813系@門司港
そして今回小倉まで乗るのがこの813系。これも実に4年ぶりの乗車ということで懐かしいですな。
先頭のクモハに乗っていると独特のGTO素子のVVVFの加速音がなんとも近未来的でカッコいいというか、この車両の雰囲気によく似合っていてよろしいです。わずか10分ほどで小倉に到着。
ここで一旦降りて駅前のコンビニで買い物をした後、駅弁屋で駅弁を購入、そして特急有明で来たというid:ohane15-2005氏と合流してはやぶさが来るのを待つ。
しばらくして、九州らしさ前回の丸形HMを付けた寝台特急はやぶさ号が入線してきます。これが今日の第二の主役。
すぐに発車した後はあっという間に門司に到着し、ここで富士と連結するために長時間停車。
まずは牽引していたED76を取り外し、機関車は単機で回送していきます。
ED76はやぶさHM単機@門司
ホーム端には思いのほか誰もいなかったんですが、富士がそろそろ入線とのことだったのでなんとかして撮れないかと思って待っていると…富士到着!
寝台特急富士@門司
走行シーンはあんまり期待していなかったんですが、予想外にもバッチリ撮れたので良かったです。やっぱり富士の単独HMは良いですね。
寝台特急富士(最後尾)@門司




赤レンガに沈む夕陽
門司駅から見える赤レンガっぽい建物に沈みゆく夕陽。綺麗だったので思わず1枚。


そんなことをしている間に、機関車はEF81に付けかわる。
寝台特急富士・はやぶさ@門司
まぁこれもわずかに下関までの1駅間だけなんですが、交直流切り替えに加えて海峡を渡るという大事な使命が。




黄昏と夜汽車
そして夜汽車というものには、何か他にはないような旅情や風情といったものを感じる気がします。


この日の夜はid:ohane15-2005氏と2人でいろいろと語り合った後、岡山を過ぎて瀬戸を過ぎた頃に就寝。
ソロの2階席は、決して広くはないもののなかなか快適によく寝られました。
いよいよ明日は東京です。

車番・乗車距離

芦屋〜新大阪:東海道本線・快速/草津、サハ220-5
新大阪〜福山:山陽新幹線・こだま639号/博多、26-7208
福山〜徳山:山陽新幹線ひかりレールスター453号/博多、727-7010(サイレンス・カー)
徳山〜下関:山陽本線・普通/下関、モハ114-3004
門司港〜小倉:鹿児島本線・快速/中津、クモハ813-302
小倉〜東京:鹿児島本線山陽本線東海道本線寝台特急はやぶさ、オハネ15-2003
●乗車距離(1日・富士ぶさ含む):1701.2km