季節をまたぐ一日乗り鉄の旅

勾配標と富士山

実家に帰省しようと思っていた時期にちょうど家族が長崎に旅行に行くことが判明し春休みには帰省できなくなってしまったので、余った18きっぷと帰省のために予定を空けている期間を有効活用するべく一日どこかに旅行しよう、ということで。


早朝の布田駅
朝は4時台に起きて早朝の布田駅から上りではなく下り方面の6:07発の各駅停車に乗る。休み明けの平日だというのに飲み明かした人が大量に乗っている電車の中にはアルデヒド臭が充満していて清々しさのかけらもない。


分倍河原で下車してJRの改札で18きっぷにハンコを押してもらい、ぎりぎりのタイミングで南武線に乗り換えて立川へと向かいます。


115系長野色@立川
立川からは甲府行きの普通電車に乗車。中央東線の山梨方面へと向かう電車は高尾以西のイメージが強いだけに、この『中央本線』ではなく『中央線』のイメージが強い立川まで乗り入れてくる115系を見るとなんとも新鮮な印象があります。


さて、今回はどういう旅かというと実は一日で行って帰ってこられる路線でまだ乗ったことのない飯山線という路線があるのを発見したわけでして、せっかくだし今日はそっちを攻めてみようといった感じ。別にJR全線乗りつぶしとかいうのにはあまり興味はないんですが、やはりまだ見ぬ場所があるというのはそれだけでわくわくさせられるものがあります。


立川を出た115系は多摩西部の住宅街を抜け、高尾を過ぎて山線区間へと突入していよいよお馴染みの中央本線に。大月でどう見ても富士急ハイランドに向かうとしか思えない圧倒的リア充共がぞろぞろと降りていった車内からは『205系によく似た電車』が見えた。水戸岡先生の手にかかるとなんの変哲も無い通勤型車両もあれほど変貌するのか…これがデザイナーの力。


中央東線の風景
ところどころでいかにも旧線っぽいトンネルの遺構が散見されるのがなんとも興味深い。これいつ頃まで使われてたんだろう…なんてことを考えながら山々した区間を抜け、勝沼ぶどう郷あたりで甲府盆地を一望できるポイントがあるんですがやはりそこから見下ろす風景はなんとも広々としていて気分がよろしい。


勾配標と富士山
駅でたまたま止まったすぐ近くにあった勾配標と遠くに見える富士山を絡めて。


373系特急ワイドビューふじかわ@甲府
さて、甲府で乗り換えなわけですがこれは別に今回の旅には関係ない373系特急ワイドビューふじかわ。実は身延線は災害のためにずっと不通区間があってつい数日前に全線復旧したばかり。こうして373系が当たり前のようにここまで来るのも実は久しぶりの光景だったりするのです。


115系スカ色@甲府
211系の転属計画などでいよいよ引退フラグが立ち始めている山スカの115系


115系スカ色&長野色@甲府
こちらもおそらく211系によって置き換えられるであろう長野色の115系との並びを。


さて、この右側の松本行きに乗って小淵沢を目指します。途中の日野春では恒例の特急退避。


日野春駅にて
すっきりと澄んだ青空に浮かぶ白い雲、そして右奥にそびえる八ヶ岳というのがなんともいい風景。


E257系特急あずさ@日野春
富士山をバックに走って来たE257系特急あずさ。


キハ110系@小淵沢
さて、そこからはあっという間に小淵沢に到着。ここで小海線のキハ110系に乗り換えです。


JR鉄道最高地点
列車は小淵沢から一気に急勾配をひたすら駆け上り、標高1345.67mのJR最高地点を通過。気がつけば粉雪が舞っていました。


小海線の風景(その1)
野辺山の高原地帯はまるで粉砂糖をふったように一面うっすらと雪化粧。里雪とは明らかに雪の質が違うのがよく分かります。


鉄塔
下っていくにしたがって雪はすっかりなくなりすっかり冬枯れの景色になった中に現れた二本の角を持つ謎の形の鉄塔。これ前に富山県で見たのがやたら印象に残っていたんですがこんなところにもあったとは…。鉄塔マニアじゃないのでよく分からないけどこのタイプの鉄塔はなかなか珍しい気がする。


小海線の風景(その2)
そしてどん曇りの天気も佐久平あたりまで出てくると嘘のような青空に。遠くに見える浅間山は真っ白。


169系しなの鉄道色@小諸(その1)
さて終点・小諸駅に到着すると旧信越本線と合流するやいなや横を華麗にぶち抜いていった169系がすぐ隣のほうに。かつてはしなのサンライズ号やしなのサンセット号で9連で爆走していたこの車両も保安装置の都合で篠ノ井〜長野間に入れなくなったために今や小諸〜軽井沢間というわずかな区間で細々とピストン輸送に徹するのみという悲しい運命に。


169系しなの鉄道色@小諸(その2)
おそらくこのしなの鉄道の169系が現役のものとしては日本最後の直流急行型電車。まぁ185系373系なんかは特急型を名乗ってこそいても実質的には急行型みたいなもんなんですが、なんというかこのかつての急行型独特の雰囲気や旅情は個人的にとても好きだったりするのです。


169系&189系@小諸
かつて横軽越えの信越本線で共に活躍したあさま色189系とのツーショット。


さて、ここからはしなの鉄道線に乗って長野を目指します。経営分離で3セク化されると18きっぷが使えなくなってしまうのがネック。
まぁ18きっぷ云々なんて正直本質的にはどうでもいい話なんですが、かつて特急街道として名を馳せた信越本線長野新幹線開業で三セク化され、運賃もJR時代より3割以上値上げ。地元の足を不便にしてまで新幹線を通す、これが果たして本当に地元が望んだものなのだろうか…。地方の三セクって基本的に赤字抱えて存続問題になってることもしばしばあるけど、交通基本法が成立したらこのへんの情勢も少しは変わってきたりするんでしょうかね。


テクノさかき
テクノさかきと聞いてロケット団のボスがライディーン聴きながらノリノリで踊ってる姿を思わず想像した。


タキ給油中
タキ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
タキ自体は東京近辺では乗り鉄をしていると時々見かけるんですが(逆に関西では見る機会が無い)、こうして給油をしているシーンは初めて見たのでなんか感動。


さて篠ノ井からは再びJR線に合流。この区間だけは利用者数も多く車内は高校生とかも多くそれなりの混雑に。


長野に到着後、次の電車までは2時間近くあるのでここらでまずは昼食といきますか。孤独のグルメ改めぼっちのグルメは長野駅前で戸隠蕎麦。


Cセット@そば味処ぼっち
駅から徒歩数分のところにある『そば味処ぼっち』という蕎麦屋さん。ぼっちというのは別に自分のようにぼっちで食べに来る人が多いからではなく、この馬蹄形の盛り方をぼっち盛りと云うのだとか。
風味は強くないがコシがあり喉越しがよい蕎麦と、甘くないきりりとしたつゆ。濃厚な蕎麦湯でこの蕎麦つゆを割って最後に愉しむのがまた一興でございます。


そんなわけで昼食は美味しい信州の蕎麦を楽しみ、それから夕飯を調達しようと長野駅に向かったところどうもこの駅は駅弁がほぼ皆無のようでどうしようかと思いつつ駅前をうろついてたらたまたま入ったながの東急の催物コーナーでなんとたまたま期間限定で駅弁&うまいものフェアをやっているではありませんか…!!
そんなわけで思わぬところで新潟駅弁と飛騨牛コロッケをゲット。何この 圧 倒 的 勝 ち 組 感
いやはや自分は旅行に行くとたいてい思いもよらぬ幸運に巡り合うので実に楽しい。相変わらず運だけは尽きないようです。


115系長野色快速みすす@長野
長野駅に戻ったらやって来たのは115系長野色の快速みすす号。飯田線へと直通していく列車なんですが今この国鉄時代からの快速幕を見られるシーンはなかなか貴重。


キハ110系@長野
で、自分が乗るのはその115系ではなくいよいよ飯山線のキハ110系。


疎開中の209系&211系@北長野
まず発車すると信越本線を少し走るわけですが、北長野やらあちこちに京浜東北線の209系や東海道線の211系が疎開留置されているのを発見。211系は最近引退したとこだけどあの209系まだ放置してたんすか…。。


飯山線の風景(その1)
そしていよいよ飯山線へ入り、右手に千曲川を見ながら走っていきます。千曲川というのは日本最長の河川である信濃川の水系の長野県側部分の名前なんですが、なるほどその名の通りくねくねと曲がって流れている印象。


飯山線橋梁架け替え工事
替佐駅のところでは近々一晩で架け替え予定の新しい橋梁が準備中。


飯山線の風景(その2)
さてこの飯山線という路線は東日本屈指のローカル線のひとつで、同時に日本有数の豪雪地帯を走る路線でもあるわけでして、車窓には気がつけばそこかしこに残雪が。


飯山線の風景(その3)
そして気がつけば一面の雪原に。この運動場のようなところにあるおびただしい数の雪だるま的サムシングはいったい何なんでしょうか…。


戸狩野沢温泉駅にて
戸狩野沢温泉駅では3両編成の後ろ1両を切り離し。むしろここまで3両も必要だったんだろうかこの路線…w
かつてはスキー客用の列車も乗り入れたりしていた路線ですが、今ではスキー客もわずかにいるものの基本的に皆さんバスで行く時代になってしまったのでそういう人の姿はあまり見かけなくなりました。


おやき
さて、雪景色を見ながら長野駅で買った西澤のおやきを食す。長野の名物ということでおやきは長野に行くたびに毎回のように食べていたんですが、この西澤のおやきが自分の今まで食べた中では一番美味しかった気がします。これが出来たてだったらどれほど美味かったことだろう。ちなみに奥に写ってるお茶がなぜか北海道キヨスク限定の緑茶うららであるところは突っ込まない方針で。美味しいけどまぁ普通の緑茶でした。


飯山線の風景(その4)
車窓に覆いかぶさる雪の壁。列車はひたすら雪の谷の中を走っているような感覚です。


森宮野原駅にて
森宮野原駅。いつぞやの地震の時にその名前が知られた長野県栄村にあるこの駅は1945年2月12日に記録された7.85mというJR日本最高積雪地点の駅。ちなみに駅名は『森宮』+『野原』ではなく『森』+『宮野原』という2地名に由来しているのだとか。へぇ〜。


飯山線の風景(その5)
3月もそろそろ終盤に入り東京は少しずつ春になりつつある中でこちらはまだ終わる気配も見えない長い冬の真っ最中。透き通った青空があるかと思ったら雪で一面ホワイトアウトしたり、こうして列車の旅をしていると場所によって次から次へと気候が変わっていって実に面白いものです。


越後川口駅にて
そして終点越後川口駅に到着。飯山線にこうして初乗車を果たしたわけですが、長野〜新潟にかけてのこの豪雪地帯を走るローカル線という路線の特色が見事なまでによく分かりました。非冷房のキハ48で行く只見線の旅にはさすがに敵わないにしても、只見線が災害で一部不通になっている現在は乗り鉄的にはその代わりを補って余りあるほどのなかなか良い路線でした。


キハ110系&115系@越後川口
キハ110系と115系の並び。


越後川口駅
雪の降る越後川口駅。地下通路やホームなどの雰囲気がなんとはなしに近江塩津を彷彿とさせます。別にそんなに似てるってわけでもないんだけれども。


さて、ここからは上越線。越後湯沢〜水上間の終電の早さには定評があるんですが、4/1まで限定で18時台にも上越国境越えの水上行きの普通列車が季節列車として走っているので今回はそれを賢く利用するスケジュール。途中までは結構混んでたけど越後湯沢に着く頃にはだいぶ空席が目立つように。この間らぼちぇの合宿で来たゆざわ健康ランドの脇を通り、1編成しかいない貴重な北越急行の683系スノーラビット編成を目撃したりしつつ越後湯沢。


味噌焼きロース重
というわけで上越線の国境を越えつつかつての文豪に想いを馳せながらなぜか長野駅で買った新潟駅弁・味噌焼きロース重をいただきます。
もちろん肉なんて熱々のを食べるのが一番美味しいに決まってるわけですがこうして冷たいものでも美味しく食べられるように作られているあたりはさすが駅弁。越後もち豚の味噌漬けとのことなんですが、やはりこういうご当地色が押し出されているものはなかなかに駅弁らしさを感じますね。


日本一のモグラ駅と名高い土合駅や同じく下り線ホームがトンネルの中にある湯檜曽駅。初めて普通列車でこの区間の上りに乗ったけど真っ暗で何がなんだかさっぱり分からん…でもまぁ晴れてたら星とか綺麗なんだろうなぁ。


115系車内にて
ところでこの新潟色115系、シート自体はお馴染みのボックスシートなんですがその全面に覆いかぶさるように掛けられているシートカバーがなかなかに特徴的。新潟の115系には何度も乗ってるけどこんなのは初めて見た…。


115系新潟色&湘南色@水上
終点水上駅にて115系新潟色湘南色の並び。


発車を待つ115系@水上
人気のあまり無い駅で静かに発車を待つカボチャの115系に漂う旅情がまたなんとも。


水上駅
ちなみに水上で乗り換え時間が15分ほどあったので駅前に出て星でも眺めてみる。今日は月、金星、木星が一直線に並ぶという珍しい天文ショーが見られるとのことだったんですが、すばるが6個ぐらい判別できる程度にはよく見えてテンション上がったけど木星が山に隠れちゃってたのだけは少し残念。


そして水上からは115系のクハに。たまには付随車なんかにも乗ってみるとちょっとした客車の旅みたいな気分を味わえてよい。特に夜の空いてる時なんかは旅情満点です。ちなみに途中沼田を過ぎたあたりで太陽系3連チャンが窓から奇跡的に少しだけ見えたので個人的には満足です。ついでにE751系EF64に牽かれて上越線を下っていくのも目撃。


新前橋駅にて
さて、新前橋からはいよいよE231系の上野行きに乗って首都圏へと戻ります。実はこれだけJR東日本管内を乗り回しているにも関わらずJR型の電車に乗るのは今日はこれが初めて。


あとは特に何もせずにガラガラの車内でまったりと過ごしたあとは赤羽で埼京線(ここでなぜかりんかい線の車両)へと乗り換えて新宿に到着後は通勤快速・各停と乗り継ぎ、東京→神奈川→山梨→長野→新潟→群馬→埼玉→東京と回ってついにスタート地点の布田駅に日付が変わる頃に到着。
今日は実に18時間ほぼ乗りっぱなしの強行日帰りスケジュールだったけど、冬晴れから山雪、豪雪までいろんな空や風景と出会えたし美味しいものもたくさん食べられて本当に充実した一人旅でした。いやーたまにはこれだけストイックに乗り回すのも楽しいものですねヽ(´ー`)ノ

車番・乗車距離

布田〜分倍河原京王線・各停/高尾山口、8105
分倍河原〜立川:南武線・各停/立川、モハ204-78
立川〜甲府中央東線・普通/甲府、モハ115-1068
甲府小淵沢中央東線・普通/松本、モハ114-1014
小淵沢〜小諸:小海線・普通/小諸、キハ110-113
小諸〜長野:しなの鉄道線信越本線・普通/長野、クモハ115-1013
長野〜越後川口飯山線・普通/越後川口、キハ111-212
越後川口〜水上:上越線・普通/水上、モハ114-1062
水上〜新前橋:上越線・普通/高崎、クハ115-1202
新前橋〜赤羽:上越線高崎線・普通/上野、モハE230-3507
赤羽〜新宿:埼京線・通勤快速/新木場、70-036
新宿〜つつじヶ丘:京王線・通勤快速/橋本、8258
つつじヶ丘〜布田:京王線・各停/高幡不動、9755


●乗車距離(1日):649.7km