一時代の終焉

6300系と梅田駅

今日は朝から…のつもりが疲れもあってなかなか起きられず結局昼からになってしまったんですが、とりあえず阪急で梅田まで出る。
阪急8032F+7014F@梅田
その梅田まで乗った特急に入ってた編成がこれ。ついこの間まで8032×2R+7024×4R+8033×2Rという変則的な8両編成を形成していたのが、神戸線のこの7024Fに加えて増結用2連の7025Fと宝塚線の7014F(6連)をトレードするかたちで転属してきた7014F。それがかつての8032Fとくっついて8連になったわけですが、まさかこんなすぐに乗車することになろうとは。個人的には前の8連が気に入ってただけにちょっと残念だったりしますが。


で、梅田のサービスセンターで阪急阪神1dayパスを購入。というのも、わざわざ昨日急いで関西に帰ってきたのはひとつ大きな理由があるわけでして、それが今日でとうとう引退してしまう京都線のエース6300系。
次世代の特急車両9300系にその座を奪われ、最後の1編成となったトップナンバー6350Fも1月中に一度姿を消したものの引退記念として2/21〜28までの8日間限定で走ることになったわけですが、入試の兼ね合いもあって他の日に行くことが出来なかったので、絶対人多いだろうなぁと思いつつ仕方なくこの最終日に。
今日は梅田発は13:20の特急からだったので、その15分ほど前から待ってみる。どうやら同じことを考えている人がたくさんいる様子。


そして13:10発の特急が出てからしばらく経って、向こうのほうからいよいよ本日の主役がやってきました。
降車扱いが終わり、名物のシート一斉転換があってドアが開く。まずは1両目のC#6450に乗車。


阪急C#6450銘板
車番プレートと号車ステッカー、そしてかつての栄光を語るブルーリボン賞のプレート。


阪急6350F引退ヘッドマーク
2/24からの最後の5日間だけ掲出される引退記念ヘッドマーク
『さようなら』ではなく『ありがとう』という言葉が使われているあたりに、この車両に対する阪急の思い入れがよく伝わってきます。


阪急6350F引退HM@梅田(その1)
先頭車付近はプチ撮影会のような雰囲気に。
ごっついカメラを持った鉄ちゃんだけではなく、携帯を向けて記念に撮ろうとする人がたくさんいるというのはやはり老若男女いろんな人に愛された証拠なのかもしれません。


さて、あっという間に発車時刻になったので車内に乗り込みます。先頭の一角だけは鉄ちゃんがやたら固まってるのは嵐山直通臨の時と同じくいつもの流れなんですが、他ではもともと座席数も多いということでだいたい席が埋まる程度でまったりした雰囲気でした。
十三でもたくさんの撮り鉄の前を通り、淡路を過ぎ、茨木市高槻市を過ぎ、東海道新幹線やJRと並走して長岡天神、そして桂。とりあえず今回は桂で下車。


阪急6351F@桂
桂では嵐山線で第2の人生を送り始めた6351Fが停車していました。


さて、これから1.5kmほど離れた桂川橋梁まで6300系を狙いに行くんですが、折り返しは河原町14:10発なので残された時間はわずか15分ほど。
初めて歩く道ということを考えると相当時間的に厳しい行程ですが、携帯の地図を頼りに途中小走りになりつつなんとか通過の3分ほど前に桂川の土手に到着。


阪急7325F準急梅田行き@桂川橋梁
桂で特急を待避する7300系の準急。
そしてそのすぐ後にいよいよ主役が再び登場。


阪急6350F引退HM特急梅田行き@桂川橋梁
晴れの予報だったのに思いっきりどん曇りで露出が全然足りず、ISOをかなり上げたものの慣れない場所で久々にまともな走行写真を狙ったということもあって正直かなり微妙なカットになってしまいましたが、こうして2枚扉の美しい列車の最後の勇姿が一応記録できただけでも喜ぶべきこと。一応6300系の走行写真自体は秋に毎週通っていた崇禅寺で既に撮ってあるし。


本当ならせっかく来たんだからここでいろいろ撮影していきたいところですが、6300系を追いかけるという目的があるし天気が微妙ということもあるので今回は早々と撤収して再び桂の駅に戻る。
そして今度はせっかくなので、嵐山線で余生を送る6300系リニューアル車に乗ってみることに。
嵐山線自体には最近よく来てるんですが、行楽期ばかりということもあっていつも8300系の6連が応援に駆けつけていて『6300系改』にはまだ一度も乗ったことがなく、実は今回が初乗車。
しかしやっぱり車内はきれいにリニューアルされ、シートはロングシート&1+2列の転換クロスシート。ただ転クロは9300系と同様のちと残念なシートなんですが…。
列車は発車してわずか9分で終点・嵐山に到着。
阪急6300系リニューアル車車内
ただ引退するのではなくちゃんと第2の人生が用意されていて、しかもこれだけ気合いが入ったリニューアルまでされるというのは趣味的には非常に嬉しいものですが…しかし冷静に考えてこの路線にクロスシートは必要ないよね多分。。
そして嵐山でそのまま折り返し(1dayパスを使ってるのでいくらでも乗り放題とはあら便利!)、桂へ戻る。本当は次の6300系もいろいろと沿線で撮りたかったんですが、高速で走る区間だと露出不足で被写体ブレが怖いということもあるので、あまりまともな構図では撮れないのは承知の上で桂の反対側ホームで狙ってみることに。


桂駅パタパタ
桂駅のホームの列車案内はLED式、パタパタ、さらには嵐山線ホームは行灯式と3種類揃ってるんですが、どうやらこれらもとうとうLED式に全て統一されてしまうようで、真新しい表示器が準備されていました。この駅のパタパタは先発の表示などが一体となった旧式タイプのものだったんですが、これも間もなく見納め。


しばらく待って、ホームにも程よく人が集まってきて、ここでようやく主役降臨。
阪急6350F引退HM特急河原町行き@桂
無難というか面白みのない構図ですが、とりあえず記録としてはこれで十分。せっかくの引退HMなので一応こういうシーンも記録しておかないとね。


阪急6350F引退HM特急河原町行き(後撃ち)@桂
後撃ちもバッチリ。


本当ならここで急いで反対側のホームに行って次発の準急に駆け込み河原町から6300系に乗る…予定だったんですが間一髪でこれに失敗して、仕方なく次の特急で烏丸へ行ってそこで対面乗り換えというまたややこしいことをする羽目に。
中間車の人がなるべく少なそうな号車を狙って乗ったんですが、それでも程よく一通り席が埋まる程度の乗車率だったのでここでは座れず、途中の高槻市でようやく席が空いたのでここで座る。やっぱりふかふかのクロスシートと気品溢れる段織りのアンゴラ山羊のモケットが6300系の証だと思うのです。


梅田駅と阪急6350F(その1)
梅田に到着するといよいよギャラリーの数がすごいことになってきました。時間的にちょうど500系ラストランを追っていた人たちが流れてきたというのもあるかもしれませんが…梅田駅にこれだけの鉄道ファンが集まってる光景は見たことがない。。


梅田駅と阪急6350F(その2)
ただ、頭端式のホームになっているおかげで身を乗り出して撮るような危険なことをする人も少なく、ホーム係員はもちろんのこと最近JRではいろいろ問題もあったということもあって鉄道警察まで配備されていたんですが混乱は全く無く終始良い雰囲気でした。
列車が出て行った後に、ホームの係員が『ご協力、ありがとうございました!』と皆でホームに集まる人々に深々とお辞儀をしている姿はなんとも阪急らしいなと思わされました。こういう細かい心配りが阪急という会社の品の良いイメージを陰で支えている気がします。


阪急7007F摂津市駅開業HM@梅田
丁度いいタイミングで神戸線ホームに停車していた、摂津市駅開業HMを掲げた7007Fの特急。ここにも数人の撮り鉄が集まっていました。どう考えてもついでに撮ってるんだろうけど。


さて、そんなわけで乗るほうもまだ中途半端になってしまったので、急遽予定を変更して結局最終の河原町行きにも参戦することがここで決定。それまでにはまだ1時間40分もあるので時間つぶし。
実は今日も昼食のタイミングを逃してしまっていたので、とりあえず日曜日だから開いてる店は少なそうだけどこの間紹介されてたラーメン屋でも行こうかなぁと思いつつ久々に大阪駅前第2ビルまで足を伸ばしてみたんですが、案の定今日はお休み。
しかし同じフロアに入っていた『楼蘭』というラーメン屋がなかなか良さげだったのでここに入ってみることに。


醤油ラーメン
いろんな種類のラーメンがあったけど今回はベーシックに醤油ラーメン¥680+味玉¥100でオーダー。
これといった特徴は無いんだけど、丁寧に作り込まれた感じのするバランスのとれた醤油ラーメン。最近はどこもひたすら凝りまくったラーメンが多い中で久々にこんなラーメンを食べるとどこか懐かしさを覚えます。空腹や予想外の寒さも相まって実に美味でした。というかほっとした。


さて、軽く腹ごしらえも済んだので再び梅田駅へ。まだ6300系の時間まではしばらくあったんですが、最後ということで念には念を入れて30分ほど前から並んでみる。鉄ヲタならやっぱり先頭車か最後尾に…と考えそうなところなんですが、極力ゆったりと最後のひとときを楽しみたいので敢えて後ろから3両目へ。動力車だからという理由もあるにはあるんですが。


阪急梅田駅にて
降車ホーム先端にはテープも張られ、いよいよ物々しい雰囲気に。報道陣も多数詰めかけていたようで…本当にこれで最後なんだなぁ…。
さすがにこの騒ぎにもなると一般の利用者も気になるようで、列に並んでる人に一体何があるのか訊いてる人もちらほら。京都線の2ドア車両といえば京都線利用者であれば誰もが知るところなので、さすがにこの車両の知名度は高いようす。


梅田駅と阪急6350F(その3)
そしていよいよ最後の走行に向けて6300系が、どこからともなく響いてきた拍手とともに入線。
いつものように河原町から運んできた客を降ろし、いつものようにドアを閉めてシートを一斉転換。ホーム全体から『バタンッ』という音が聞こえてずらり整然と並んだシートが一気に転換する様子はやはり壮観です。
ドアが開く。乗り込む。最後は進行方向右側の窓側席を確保。
最後ということで車内ももっとすごい騒ぎになるかと予想していたんですが、確かに駅はすごいことになってたものの車内は最後までいつものまったりした雰囲気。9300系では立ち客満載になるところでもこの6300系ならほぼ全員着席した状態で乗れるというのはやはり2ドア車ならではのメリットでしょう。そのドアの少なさゆえに、往年の十三〜大宮ノンストップの京都線特急は、淡路にまで停車して『特に急がない』になってしまった今となっては乗降に時間のかかる厄介者になってしまったというのは、これもある種時代の流れで仕方ないものなのかもしれませんが、9300系には特急としての風格は感じられないだけにこの車両の引退というのは阪急の築いてきた一時代が終わりを迎えることを感じさせられます。


そして、たくさんのギャラリーに見送られいよいよ最後の列車が梅田を発車します。もうこうして河原町行きの特急として梅田駅に戻ってくることはありません。


もうすっかりと暮れてしまった大阪の夜景が窓の外を流れていく。


思えばこの車両は自分の憧れでした。
西宮の祖母の家に遊びにきた時に、毎年墓参りで京都に行く時には必ず乗った車両。
十三から大宮までノンストップだった時代にも乗りました。
いつしか途中の高槻市にも停まるようになりました。
それがだんだんと停車駅を増やしていっても、それでもやっぱり自分にとってこの車両は京都線の特急という永遠の憧れの存在でした。
これに乗って京都に行く。それがどれほど心躍る、わくわくするような小旅行だったことか。
京阪間のスピード競争で、あの国鉄を、JRを本気にさせたのはまぎれもなくこの車両です。
この車両が存在しなかったならば、JRの221系は存在しなかったかもしれないし、今やJR西日本の看板列車となった新快速も今のような形では存在していなかったかもしれません。
自分の最も好きな車両のひとつであり、同じく自分の最も好きな車両のひとつである221系の登場に大きな影響を及ぼし、そして奇しくも自分の最も好きな列車のひとつである500系のぞみと時を同じくしてその役目を終える…。


阪急6350F車内にて
この日記を書く頃には、この光景ももう過去の思い出。


烏丸を過ぎ、いよいよ最後の1駅。


いつもと何一つ変わらない、河原町到着のアナウンスがあり、列車は静かに終点・河原町のホームに回送幕で滑り込む。


阪急6300系補助シート
この車端部の補助シートとも今日でお別れ。


阪急6350F引退シーン@河原町
反対側のホームに停まっている9300系の特急よりも先に、すぐに回送として桂車庫に引き上げてしまう列車。
その列車の最後の発車シーンに、たくさんのファンが詰めかける。


発車のアナウンスのあと、短い警笛をひとつ鳴らして動き出す6300系。
同時に巻き起こる拍手。
たいていこういう引退列車の発車シーンでは、やたらファンが最後に騒ぎ立てたり絶叫したりすることが多く見られるんですが、今日はそういう人は約1名だけいたものの、ほとんどの人が叫ぶわけでもなく騒ぐわけでもなく、無言の拍手で最後の瞬間を見つめていました。
自分にとっても思い入れのある列車。ましてや京都線をずっと使っていた人や、旧型車がまだたくさん残っていた時代に颯爽と登場した美しい白ハチマキの列車に憧れた世代の人がどれほどこの車両に対して深い思いを抱いているかは想像に難くありません。
そんな思い入れのある列車の35年間の活躍への感謝や、お疲れさまの気持ちのこもった拍手でした。それはまるで憧れの的だった宝塚のトップスターの引退記念公演のような。


自分は廃止になりそうな列車はあらかじめ目をつけて乗ったり撮ったりしておいたり、廃止前に行くとしても当日ではなくその少し前に行くことが多く、何でもかんでも最終日に詰めかける葬式鉄の類ではないのだけれども、今日ばかりは名車の最後の瞬間に立ち会えたことを本当に光栄に思った。


嵐山線用の臨時列車のために6連化改造されるとかいう噂も飛び交っているし、これから先どういうことになるのかは全く分からないけれど、そういったことがどうあれこれで紛れもなく輝かしいひとつの時代が終焉を迎えたのでした。