九州旅行3日目

球磨川の渓谷(球泉洞付近にて)

さて九州旅行3日目。今日は肥薩線がメインの日です。
まずは新八代駅の在来線ホームで電車を待つ。
415系@新八代
反対側からやって来たのは415系。熊本で折り返して豊肥本線の光の森まで直通するという面白い列車ですが、これも熊本市の中心部が熊本駅よりもそこから数駅入ったところにあるからなんでしょうか。


まずやって来たのはオールロングの815系。熊本近郊の列車は基本的にこの車両ばかりなのがちょっと残念なところ。まぁ車両自体は決して悪くはないんですが。そして乗ってみたらなんかどこかで聞いたことのある音が…これはもしやE231系に搭載されてる墜落インバーター…!?
わずか数分で終点・八代に到着。昔はここから先もずーっとJRだったのに九州新幹線開業のおかげでJRから分離されて、第三セクター肥薩おれんじ鉄道に。しかしそれまで3両編成とかの電車が走っていたところにある日突然単行とかのディーゼルカーしか来なくなってしまった路線の沿線の人たちはどう思ったことでしょうか。新幹線は人の流動を盛んにさせて地域の活発化に繋がるとか主張してる人がいますが、少なくとも地元での通学や通勤といったちょっとした移動で使っている沿線住民にとってみればとんだ迷惑以外の何物でもないですね。経営的にも予想以上に厳しい状態が続いているようで、これは全国各地で言えることなんですが新幹線が開業したばかりに最終的には路線自体が消滅しかねないんじゃないかと思うと恐ろしい話です。まぁここの場合は貨物が通ってるのでどうなっても線路だけは残るんだろうけど。


で、その肥薩おれんじ鉄道の収益増に少しだけでも貢献してあげたいところなんですが、残念ながら今日のルートは肥薩線。まぁこの路線だけはホントにどうしても外せない超有名どころなので仕方ない。。
というわけで八代の駅でしばらく待っていると回送の気動車が到着。しかしどうやらこれから乗る列車はこれではない様子。
まぁどうせ単行か2両ぐらいの普通のキハ40系かキハ31系あたりが来るのかなぁ…と思っていたら、


キハ140系いさぶろう・しんぺい@八代
…!?なんか来た!!


どうやら後から乗る予定のいさぶろう・しんぺいの車両の送り込み運用が存在していたようで、自分たちが乗ろうとしていた列車がまさしくそれ。これは予想外のラッキー。
いさぶろう・しんぺい車内
さすが観光列車というだけあって車両のほうもJR九州らしく大改造されていて、最初に見た印象は『走る蕎麦屋』。何それって感じですが乗ってみたらなんとなく理解できるかと。遮光カーテンの材質が簾になってたところもまた凝ってます。
さて、肥薩線はまず日本三大急流として名高い球磨川に沿って走ります。6年前にここを急行くまがわのキハ58系に乗った思い出は今でも鮮明に残っているんですが、それだけ印象に残るほどなかなか素晴らしい渓谷風景です。
肥薩線の風景(その1)
しかし問題が発生。アキバで買った8GBのSDカードを入れて写真を撮っていたら突然フォーマットエラーを起こし、撮影はおろか写真を見たりすることさえできない状態に。残ったカードは1GBのSD1枚だけ。仕方ないのでとりあえずこれでなんとか場をもたせることに。。


1時間ほど乗車すれば、今日の第一の経由地・球泉洞駅に到着。ここから有名な球泉洞まで徒歩。
まず駅から下流に向かってしばらく歩いていたんですが、ちょうど特急くまがわが通過する時刻だったのでちょっと待ってみる。
キハ185系九州横断特急@白石〜球泉洞
山々の緑に派手な赤い車両がよく映えます。色が派手すぎて調和がとれていないという意見もありますが、昔のキハ58系やキハ52系あたりの国鉄色に代表されるようにローカル線の主力として走っていた車両はだいたい赤、橙、黄色といった鮮やかな暖色が使われていたわけで、このコントラストが鉄道の存在感を示してくれているのでこういう色のほうがむしろよく合っているんじゃないかな、という気がします。


駅から球泉洞までは思いのほか結構な距離があって、ようやく対岸に洞窟の看板が見えたといってもまずは大きな吊り橋を渡らないといけないんですよね。
球磨川の風景
橋の上から見た球磨川渓谷。侵食作用の凄まじさを見せつけるかのような川沿いの絶壁は圧巻。その手前から川に注ぎ込んでる水は、もしかしたら球泉洞の内部から流れてきてるものなのかもしれません。


球泉洞吊り橋
対岸に降りていって吊り橋を見る。なかなか立派な橋です。
ここの河原でしばらく遊んだりアウトドアクラブのような記念写真を撮った後、これから球泉洞へと行くわけですが問題はその場所。さっきの写真の崖の上のような位置にあるので標高差数十メートルをひたすら登って行かないといけない。これはなかなか大変。
一応観光客のためのリフトが設置されているんですが、残念ながら冬期は運休中。どうせ誰も来ないからということで駅に大きなほうの荷物を固めて置いてきたんですが大正解でした。
そしてようやく球泉洞に到着。結構疲れた。。


てことで、いざ球泉洞内部へ。鍾乳洞といえば東北に修学旅行に行った時の龍泉洞以来なんですが、なんか洞窟探検ってワクワクするよね。冒険心をくすぐられるというか。
まずは人の手で掘られたトンネルを抜けると、最初に探検隊が降りてきたという地点に到着。そこからはいよいよ洞窟の内部。
やっぱり洞窟の内部ってのは長い間の侵食などといった自然の力によって出来てるわけで実に不思議な形になってます。何か巨大な怪物の体内のような。


球泉洞にて(その1)
鍾乳洞といえば普通の人はまず真っ先にこういうのを思い浮かべるだろうというような立派なヘリクタイト。肝心なところはことごとく金網に覆われてるんですが、なにしろいびつな形のところに無理矢理フェンスを作ってる状態なので端っこや上側は隙間だらけなので写真に撮るだけならそこからいくらでも撮れます。暗い洞窟でもISOを1000まで上げれば余裕の1/40秒露光で撮れるD90+手ぶれ補正レンズ万歳。


球泉洞にて(その2)
こちらはさっきのようなつらら型ではなくもはや柱になっている石柱。こうして一眼レフで写真を撮るとやっぱりその質感がかなりよく分かるんですが、おかげでこのゴツゴツした感じがすごくよく分かります。…まぁこのサイズに縮小してしまった後ではちょっとアレですが。。


球泉洞にて(その3)
層状に面白い形になっているフローストーンの説明。しかし日本でもテラロッサって呼ぶのか…。


球泉洞にて(その4)
こんもりとした丘状になっていて、頂上に水たまりのあるホマーテ型石筍。もはやここまでくると凄いを通り越してグロテスクの域です。これぞ自然の力…!!
そんなわけで、入場料は決して安いとは言えない値段だったんですが、1000円以上払った価値は十分あったなかなか面白い洞窟でした。


ちょうどお昼になったのでお土産物屋さんの上にあったレストランで昼食。時間があまり無かったのであんまり大したものは注文できなかったんですが、カレーライスが意外と美味しかったのでまぁ満足。
というわけで急いで駅へと戻ります。とはいっても帰りのほうが明らかに楽なので大した苦労はなく戻れました。
そして球泉洞から人吉までは2日連続となる九州横断特急1号。こんな短距離でも特急に乗れるのが周遊きっぷの強みですよね。


で、人吉からはいよいよ『いさぶろう』に乗って肥薩線の峠区間へ。この区間、列車で1時間ほどのわずか35kmの距離の間にスイッチバックループ線といった見どころがこれでもかというほど詰まっている恐ろしく密度の濃い路線。
どこかのツアー客も大量に乗り込んでいるようで、ほとんど全席指定に近い状態なので座るのは問題ないんですが車内は満員。
人吉を出てしばらくするとまずは大畑駅に到着。『おこば』という読み方は知らない人はまず読めない駅名。
もともとが蒸気機関車時代の信号所や給水所の役割が強かったため近くに集落はなく、実はかなりの秘境駅。駅舎も味があってなかなかよろしいです。
構内には桜もたくさん植わっていて春にはずいぶん綺麗に咲くようですが、さすがにこの時期ではまだまだそんな気配はありません。
そしてこの駅の何が凄いかというと、なんとループ線スイッチバックが同居しているというところ。まず駅自体がスイッチバック駅なんですが、ここから向きを変えていったあとにループ線でさらに上へと登って行く日本で唯一の区間なのです。
それだけややこしいことをしなければいけないのはここに大きな峠があって一気に登らないといけないからなんですが、なんとこの大畑駅が標高294mなのに対して次の矢岳駅の標高はなんと537m。いっきに250m近い標高差を駆け上がるわけですからそりゃ無理もない。
列車は観光のガイド案内も交えながらゆっくりと登って行き、ようやく次の矢岳駅に到着。ここにはD51が展示されていました。
この駅を出た後の区間は日本の鉄道史でも有数の難工事区間で、工事段階で多くの犠牲者を出しながらもようやく完成した矢岳第一トンネルのところには工事責任者であった当時の逓信大臣・山縣伊三郎や鐵道院総裁・後藤新平の額が飾られているようで。ちなみにこの列車の『いさぶろう』『しんぺい』という名前はこの2人の名前からなんだとか。
トンネルを抜けるといよいよ矢岳峠の日本三大車窓に数えられる区間に差し掛かります。


肥薩線の風景(その2)
えびの高原から、さらには奥に霧島連峰が望める雄大な風景。小さい写真では分かりにくいんですが、実際に行ってみるとこの素晴らしさが分かります。


列車はまたしても駅のないところでストップしたかと思うと再びスイッチバックし、真幸駅に到着。この駅も『まさき』とは普通は読めないよなぁ…。
真幸駅の鐘
この駅には鳴らすと幸せになれるという鐘があり、幸せになりたい人たちが寄ってたかって鳴らしまくってました。あ、もちろん自分も鳴らしましたが何か?


真幸にて
線路の左上に信号機があるのが見えますが、そこがまさしくスイッチバックする前に走ってきた線路。


そんな楽しい路線もあっという間に終わり、列車は終点・吉松に到着。
C55-52@吉松駅前
駅前にはC55が展示されていました。それにしてもSL多いなぁ…。


で、ここからは『日本一遅い特急』として名高い観光特急はやとの風に乗車。なななんとこの列車、特急でありながら車両がキハ47系。


はやとの風車内
…とはいってもJR九州のことなので中身は原型を留めないほど大改造されているなんてのはもはや自明ですね。
しかしいくら中身を変えたところで台車は所詮安物気動車のコイルバネなわけでとにかくよく揺れる。出力だけは無駄にデカくしてあるもんだから凄いです。もしかしたらこれは日本一よく揺れる特急かもしれません。
で、この吉松〜隼人の区間はぶっちゃけこれといって大したもののない、山里を走るローカル線。だがそれをウリにしてしまうところがこの会社の恐ろしいところ。


嘉例川駅の雛人形
途中の嘉例川駅では雛人形がたくさん展示されていました。この駅もなかなか味のあるいい駅舎。
ちなみに土日限定でこのはやとの風に合わせて駅弁が売られているんですが、これがかなり美味しいとの評判なのでいつか食べてみたいなぁと思いつつも、残念ながら今日は平日なのです。


キハ47系特急はやとの風@嘉例川
車両は黒塗りに金色の文字。さすがはJR九州


隼人からはマックスコーヒーを飲みながらひたすら日豊本線区間の爆走を楽しんでいたんですがこのまったり感は最高ですね。
本当なら途中から左側に桜島が見えてくるんですが、雨が降ってきたので半分雲の中。残念。


そして終点・鹿児島中央駅に到着。6年前に来た時はまだ西鹿児島駅だったんだよなぁ…。懐かしい。
そのままホテルにチェックインした後、まずは近くのベスト電器に行って8GBのUSBメモリをひとつ購入。これでとりあえず東横インのパソコンを使って…と思ったら困ったことにパソコンでも読めない状態なので、あとで深夜に2GBのメモリーカードの中身をそこに移す羽目に。まぁなんとかこれでメモリーは足りそうなのでよかったよかった。。
その後は、ホットペッパーで適当に検索してたら良さげな店が見つかったので『大野屋 酒房 米屋』という居酒屋へ。
桜島の溶岩プレートを使った、薩摩地鶏や黒豚といった鹿児島名産の溶岩焼きを楽しめるお店で、しかも土曜日以外は21時まで一部の料理が半額になるというサービスが素晴らしい。さらに木曜日は18時から20時まで生ビール1杯50円、焼酎1杯10円という出血大サービスがあるようで、さすがにお酒は自重しましたがそれを狙ってきてる大学生と思わしき地元のグループが楽しそうに盛り上がってました。
まぁ鉄板焼きの鉄板が石になったような感じなんですが、直火で焼いてる焼肉よりも自分はこっちのほうが好みかも。石焼チャーハンもなかなかのボリュームで、相当安いお値段でお腹いっぱい楽しめて最高でした。鹿児島に行ったらまた寄りたいお店。


というわけで、乗るものには乗ったし見るものは見たし食べるものも食べたしで大満足の1日でした。こんなに楽しくていいんだろうかホントに…w

車番・乗車距離

新八代〜八代:鹿児島本線・普通/八代、クモハ815-4
八代〜球泉洞肥薩線・普通/人吉、キハ140-2125
球泉洞〜人吉:肥薩線・特急九州横断特急1号/人吉、キハ185-1011
人吉〜吉松:肥薩線・いさぶろう3号/吉松、キハ47-9082
吉松〜鹿児島中央肥薩線日豊本線鹿児島本線・特急はやとの風3号、キハ147-1045


●乗車距離(1日):158.1km